買主の為の「賢い住宅購入術」

不動産売買における「契約」はどの時点で成立するのか?

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民法の規定では、売買契約は当事者の口頭による合意だけで成立するとされており、必ずしも書面(契約書)の作成は必要ではありません(民法555条)。賃貸借契約も同様です。実際に、宅建業者が関与せずに個人同士の建物賃貸借契約や借地契約、駐車場賃貸借契約などでは契約書がないまま物件が引き渡されて家賃や地代も支払われているということもあり得ますが、契約書がなくても賃貸借契約は成立していると考えられます。

民法555条

民法に規定する売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって成り立つ双務・諾成・有償の契約である。

しかし、宅地建物の売買契約の場合においては売買契約書の作成が予定されているのが通常です。ある土地について、売主側と買手側が「3,000万円で売ります」「3,000万円で買います」ということで一致したとしても、土地や建物の売買契約の場合には、代金以外にも協議しなければならない(例えば、古い家屋がある場合にそれを解体してから引き渡すのか)、ローンを利用する場合は、ローン条項をどうするか、売主は瑕疵担保責任をどこまで追うことにするのか、といったことです。

こういった点については、契約書案を作成する過程で協議を重ねて条件を詰めながらそれを契約書にまとめていく作業をするのが一般的です。いくら代金を3,000万円でするという大枠で合意していたとしても、それ以外の条件で折り合いがつかなければ、契約が成立したと考えるわけにはいきません。当事者としても、売買契約書を取り交わすことを予定している場合は、契約書に署名・捺印したときに契約が成立すると考えていることが多いでしょう。

宅建業者が関与する宅地建物の売買契約や、宅建業者が賃貸借契約の代理・媒介をする場合には、宅建業法第37条の書面交付の義務があり、通常、契約書に宅地建物取引士が記名・押印をすることによりこれに変える運用がなされていることから、結局のところ、宅地建物の売買契約や宅建業者が賃貸借契約の代理・媒介をする場合には契約書の作成が予定されているともいえます。

したがって、宅建業者が関与する宅地建物の売買契約の場合には、契約書を作成して当事者が署名・押印した時点で契約が成立する(したがって、契約書を取り交わす前はまだ契約は成立していない)と考えるのが、実態に合っているというべきでしょう。
※宅建業者が仲介する宅地建物の賃貸借契約においても同様です。

宅建業者の書面の交付義務(宅建業法第37条)

宅建業法第37条では、宅建業者に対して、契約が成立した時は取引の相手方又は各当事者に対して、遅滞なく、所定の事項を記載した書面(いわゆる37条書面)を交付することを義務付けていますが、通常、売買契約書を交付することで、37条書面の交付に変えています。37条書面は、必ず宅地建物取引士が記名・押印しなければなりません。賃貸借契約の媒介の場合にも37条の書面交付義務があります。

執筆者のプロフィール

リニュアル仲介株式会社不動産事業部長NAKATA
1974年 京都生まれ。家業であった呉服業界できものの販売をしていた経歴をもつ。不動産業に転職後、品川区・大田区で地元不動産会社に勤務。賃貸や売買の仲介、買取り、その他管理業務などにも携わる。現在、全国550社を超えるリニュアル仲介FC本部パイロット店の責任者へ。
普段は主に、首都圏の中でも城南エリアを中心に活動しています。

不動産業界は消費者の方が住宅を購入する際に安心して購入できる環境がまだまだ少なく、情報が不透明な部分が多い。それを少しでも解消するべく、お客様から安心して購入できる、信頼のおける仲介を目指し、住宅購入者に徹底的に寄り添う「バイヤーズエージェント」として、日々奮闘中

消費者が安心して既存住宅を購入するために、
購入前の建物インスペクション(建物調査)、耐震診断、耐震補強の提案、瑕疵保険の付保など「必要不可欠な制度や仕組み」を利用した仲介、そして、今後の時代を見据え資産価値が下がりにくい不動産の「目利き」を得意とする。

リニュアル仲介株式会社 不動産事業部 部長
・宅地建物取引士
・住宅建築コーディネーター
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